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ぷろふぃーる

このずかんをつくったひとのせつめいです

このずかんは、西野 愛美子(にしの まみこ)がつくりました

わたしは、奈良教育大学(ならきょういくだいがく)の4回生(4 かいせい)でした

いまは、京都府(きょうとふ)で小学校(しょうがっこう)の先生(せんせい)をしています

2011年に、みなさんのようちえんみんなといっしょに

むしをさがして、このずかんをつくりました

とてもたいへんでしたが、みんなむしをさがすのはとてもたのしかったです

ようちえんの先生(せんせい)たちにも手伝って(てつだって)もらって

このずかんができました

ほんとうにありががとうございます、わたしもとてもべんきょうになりました

これから下(した)にむずかしいせつめいをしますが、

知りたい(しりたい)ときは、父さん(おとうさん)やお母さん(おかあさん)

に聞いて(きいて)くださいね

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関係者一覧

石田 正樹     奈良教育大学理科教育講座生物学教室

松井 淳      奈良教育大学理科教育講座生物学教室

菊地 淳一     奈良教育大学理科教育講座生物学教室

玉村 公二彦    奈良教育大学附属幼稚園

前田 喜四雄    奈良教育大学自然環境教育センター

竹内 範子     奈良教育大学附属幼稚園

  

園庭のデジタルむしずかん 

【概要】

 本研究は、奈良教育大学学校教員養成課程理数生活科学コース理科教育専修における卒業研究(西野愛美子)の一環として実施された。本研究では、園児の身の回りの生き物への興味の芽生えを手助けする教材づくりを目的とし、インターネット上で活用できる「奈良教育大学附属幼稚園のデジタルむし図鑑」の作成を行った。奈良教育大学附属幼稚園の園庭及びこどもの森を調査地とし、2011 年 4 月から 2011 年 11 月上旬にかけて計32回の採集を行った。採集調査の対象は昆虫類に限らず、“いもむし”や“でんでんむし”など、園児が“むし”と呼ぶものを広く対象とした。本学付属幼稚園では、園児が登園してから、クラスごとでの活動が始まるまでの間に、1時間程度「園児が自ら選び自由に遊ぶ時間」がある。その時間に幼稚園に出向き、園児と共にむしの採集を行った。採集された生物は、採集場所を記録すると共に、生きた状態においてハイビジョンビデオカメラにより撮影し、得られた動画は画像管理ソフトウェアを使用してパソコンへ画像を取り込み・編集を行った。ハイビジョンビデオカメラを使用により動画から高画質の写真を切り抜くことが可能であり、カメラでの撮影が難しい“動きの速い”むしの画像も得ることができた。結果として、160 種を超す生物の画像を収集した。この内、最終的に種名まで同定できたものは、カメムシ目 27 種・ハチ目 13 種・バッタ目 15 種・トンボ目 7 種・カマキリ目 3 種・ハエ目 10 種・甲虫目 19 種・チョウ目 45 種・ゴキブリ目 2 種・クモ目6種・オオムカデ目 1 種・オビヤスデ目 1 種・等脚目 1 種・十脚目 1 種・柄眼目 3 種・無尾目 2 種・有鱗目 1 種の計 157 種である。また、157 種の内、昆虫類以外の“むし”は、クモ目・オオムカデ目・オビヤスデ目・等脚目・十脚目・柄眼目・無尾目・有鱗目の 16 種であった。全 32 回の採集回数中、内園児の自由時間に幼稚園に出向き、園児と共にむしの採集を行った回数は 23 回であったが、実際に園児が見つけてきてくれる“むし”は、ダンゴムシやバッタの仲間など見つけやすく、捕まえやすい種に偏っていたので、園児が捕捉可能な種は今回の研究でほぼ押さえる事ができたと考えられる。一方、独自の採集で集めた大多数の種は昆虫に偏った結果となった。園庭で園児が採集可能な普通種以外にも、多くの昆虫を記載出来た結果ではあるが、園児にとっての“むし”が反映されたとは言い難く、今後引き続きデータの蓄積が必要と考えられる。

 本研究で作成したデジタルむし図鑑は、実際に幼稚園での調査を行ったことにより、まさにその現場で観察される“むし”の図鑑を作成することができたことが大きな特徴である。この教材の活用にあたっては、無線 LAN ルーターや iPad を併用したインターネット接続により、保育者と園児たちが採集現場でインターネット図鑑を使用できる環境が必要とされる。また、園児たちにも園庭やこどもの森での自然観察や遊びのなかで、自らむしを探したり、見つけたむしを調べたりできるよう、園児向けの小冊子の作成、園児への配布がなされた。これらは、本学理数教育研究センターおよび学術情報センター研究開発プロジェクトの支援のもとに実現した。

【研究の背景】

 幼稚園教育要領(2008)の領域「環境」の中には、保育の「ねらい」として「身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心をもつ」が挙げられており、その「内容」としては「自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く」と示されている。また、自然の中での体験は、「科学的な見方や考え方の芽生えを培う上での基礎となる」と捉えられている。しかしながら、自然の中の体験から、いきなり科学的な見方や考え方は生まれて来るものであろうか。そこには論理の飛躍がある様に感じられる。自分の身の回りの自然に触れる経験の後に生じる“同じである”あるいは“違いがある”といった園児による識別は、可能な場合とそうでない場合がある。これを克服するには、ある程度の知識あるいは思考の方向付けを得る必要性がある。基礎的で科学的な見識の芽生えとは、したがって、ある程度の知識獲得の後に得られるものではなかろうか。

 本研究では、園児の身近に存在する生き物として“むし”に焦点をあてるが、園児がそう呼ぶ“むし”とは、なんであろうか。それは、大人が考える昆虫類だけを意味するものではない。“いもむし”であり、“でんでんむし”であり、時には“だんごむし”でもある(別役,1981)。つまり、“むし”は園児の身のまわりにいる最も身近な生き物と言っても過言ではない。仮に昆虫類だけを例にとっても、全動物の種類の 4 分の 3 を占め、現在約 95 万種以上の昆虫が記載されているほどであり(田仲・鈴木, 1999)、年間約 7000 にのぼる新種が記載される。未知種数に至っては 1 億を超えるとの推定もある(宮崎, 2008)。“むし”は、我々が自覚している以上に身の回りに多く存在しており、私達が見落としがちな小さなものの影や、隙間を利用して生活しているのである。こどもたちが、これらの生物の行動や性質を知識として得ることができれば、今迄とは全く別の風景がこどもたちの目の前に現れるであろう。上述の幼稚園教育要領に掲げられた保育のもう一つの「ねらい」に「身近な環境に自分からかかわり、発見を楽しんだり、考えたりし、それを生活に取り入れようとする」があるが、“むし”の教材化はそれを達成する可能性を秘めた興味深い題材であると考える。

 本研究では、園児たちが“むし”とよぶ生き物に焦点をあて、自然との関わりの中で、そうした興味の芽生えを手助けするための教材作りを目的とし、奈良教育大学附属幼稚園に生息する“むし”の採集を行い、インターネット上で活用できる「奈良教育大学附属幼稚園のデジタルむし図鑑」の作成を行った。この図鑑は、教育機関において最初の教育を行う幼稚園指導者のサポートに主眼を置いているが、一方では、近隣の教育現場で出現する様々な生物相に関する解説の提供や、地域の住民から寄せられる生物に対する疑問に対しての情報提供といった多岐にわたる活用にも耐えられるものである。既存の昆虫図鑑の多くは、和名検索がそのほとんどを占めるため、利用の際にはある程度の和名の知識が必要となるが、保育者の多くは女性であり、むしが苦手な人の割合が男性よりに比べて高いとされている(山下・首藤,2004)。保育者あるいは園児たちは、初めて見るむしを調べる際には、おそらく手許の生き物と図鑑の写真あるいは絵との「絵合わせ」という方法しかとれないと推測される。そこで、本研究では、ハイビジョンビデオカメラを使用することで、高画質で原色の生きたままの状態のむしの動画または写真を掲載し、「名前」、「何の仲間であるのか」、「色」、「季節」といった多彩な検索を可能とすることで、絵合わせが容易で、利用しやすい図鑑の作成を目指した。

【調査地と方法】

 調査地:本研究では、本学附属幼稚園の園庭およびこどもの森を調査地とし、そこに棲息するむしの採集を行った。

 採集調査:本研究で作成するデジタルむし図鑑は、幼稚園指導者のサポートに主眼をおいているため、実際の幼稚園での活動に役立つものでなければならない。したがって、本研究では、一般的な昆虫類に限らず、“いもむし”や“でんでんむし”など、園児が総じて“むし”と呼ぶものまで対象を広げ、採集調査は実際に園児が活動を行っている時間に、園児と共に行うものとした。本学附属幼稚園では、園児が登園してから、クラスごとでの活動が始まるまでの間に、1時間程度「園児が自ら選び自由に遊ぶ時間」がある。その時間に幼稚園に出向き、園児と共にむしの採集を行った。採集されたむしは、採集場所を記録すると共に、生きた状態においてハイビジョンビデオカメラ(HDR- CX170/XR150, SONY)により撮影した。撮影により得られた動画は画像管理ソフトウェア PMB(Picture Motion Browser, SONY)を使用し、パソコンへの画像取り込み・編集を行った。また、夏期休園期間中も独自に採集調査を継続し、できるかぎり多くの生物を記載することに努めた。採集調査期間は、2011年 4 月から 2011 年 11 月上旬までとし、計 32 回の採集を行った。

 種の同定:同定は、採集調査を行った後日、採集されたむしの標本もしくは画像をもとに、既存の図鑑資料(八木沼, 1986; 八巻, 2002; 岡田, 2004a, b; 八巻, 2005; 志村, 2005; 市川, 2006; 森本, 2007; 矢田, 2007; 平嶋・森本, 2008; 村井・伊藤, 2011; 養老, 2011)と照らし合わせて行った。種名まで明らかにできない判別の難しいものに関しては、属レベルでは確実なものとした。

 ホームページの作成:ホームページの作成には、Web オーサリングツール(GoLive CS2, Adobe Systems Incorporated)を使用した。個々のむしのページの作成とともに、「名前」「色」「大きさ」「場所」「何の仲間」「季節」「写真」からの検索ページを作成し、それぞれのページのリンクを張った。個々のむしのページは、上述の既存の図鑑資料を参考にし、解説を掲載した。

 

【結果と考察】

 採集調査:採集調査・画像の収集の結果、160 種を超す“むし”の画像を収集することができた。その中で、最終的に種名まで同定できたものは、カメムシ目 27 種・ハチ目 13 種・バッタ目15種・トンボ目 7 種・カマキリ目 3 種・ハエ目 10 種・甲虫目 19種・チョウ目 45種・ゴキブリ目2 種・クモ目6種・オオムカデ目 1 種・オビヤスデ目 1 種・等脚目 1 種・十脚目 1 種・有肺目 3 種・無尾目 2 種・有鱗目 1 種の計 157 種である。

 本研究では一般的な昆虫類ではなく、園児が“むし”と呼ぶものを広く対象とし調査を行ってきた。しかし、本研究の採集調査によって採集され種名までの同定が可能であった 157 種の内、昆虫類以外の“むし”は、クモ目6種(クモ類)・オオムカデ目 1 種(ムカデ類)・オビヤスデ目 1 種(ヤスデ類)・等脚目 1 種(甲殻類)・十脚目1 種(甲殻類)・柄眼目3種(腹足類)・無尾目(両生類)2 種・有鱗目(爬虫類)1種の16種と少ないものであった。採集回数は全32回であり、そのうち園児の自由時間に幼稚園に出向き、園児と共にむしの採集を行った回数は23回である。園児と共に採集活動を行う中で、園児が見つけてきてくれる“むし”は、ダンゴムシやバッタの仲間など見つけやすく、捕まえやすい種に偏っていた。したがって、園児が捕捉可能な種は今回の研究でほぼ押さえる事ができたと考えられる。一方、独自の採集で集めた大多数の種は昆虫に偏った結果となった。この為、園庭で園児が採集可能な普通種以外にも、多くの昆虫を記載出来た結果ではあるが、園児にとっての“むし”が反映されたとは言い難い状況となった。また、採集調査に参加してくれる園児は、むしが好きな男の子が多く、毎回決まった子が参加する傾向にあり、今回採集に参加しなかった園児が何を“むし”として捉えているか把握しきれていない状況にある。そのため、今後、引き続きデータの蓄積が必要と考えられる。

 2004 年 4 月から 2004 年 12 月までに行われた、奈良教育大学キャンパスに生息する昆虫データベースの構築における採集調査では、データベース化できた種数は 95 種(高見他, 2005)であった。今回の採集調査では、157 種のむしの画像を収集することができ、数十種ではあるが 2004 年度の調査を上回った。また、2004 年度の調査と今回の調査で、重複する種は、種数にして 56 種であり、キャンパス内で新たに記載されたものとしては、100 種になる。今回の調査で、以前より種数が増えた要因としては、撮影方法の違いが挙げられる。以前の調査・今回の調査ともに、撮影を行うのは生きた状態のむしであるということは共通している。生きた状態のむしを撮影する場合、ヒトが近付くと逃げてしまったり、同じ場所に長時間とまったりすることが少ないため、撮影が非常に難しくなる。以前の調査では、デジタルカメラで撮影を行っていたため、チョウやトンボなど飛翔能力に優れる種の撮影は非常に困難であったが、ハイビジョンビデオカメラの利用により、動画から写真を切り抜くことが可能となり、カメラでの撮影が難しく動きの速いむしの画像も得ることができた。飛翔力に優れたチョウ目の種数を比べても 2004 年の調査が 11 種であったのに対し、今回の調査では、45種と増加している。ハイビジョンビデオカメラの使用は、有効であったと判断された。

 本研究では、採集が可能であった種は、その標本を同定の試料に使用したが、採集出来なかった種は、得られたデジタル画像から識別出来る形態を基準に同定を行った。したがって、細部の構造で同定を行う種の同定は、不確実なものとなってしまい、属名までの同定となっている。これらについては、標本を得た上での詳細な観察が望まれた。

 デジタルむし図鑑:本研究で作成されたデジタルむし図鑑は、ホームページ(HP)として作成し、2012 年 4 月に公開・運用を開始する予定である。公開に際しては、本学の理数教育研究センター内に設置されたサーバー内に作成した図鑑を配置し、本学 HP トップページの「教材・図鑑」(http://www.nara-edu.ac.jp/21_kyouzai_zukan.htm)に設けた新たな項目「奈良教育大学附属幼稚園デジタルむしずかん(仮称)」とリンクを張る計画である。この図鑑は、名前や仲間といったある程度の知識が必要な検索方法に加え、色や季節、大きさ、すみか、写真といった多彩な検索方法を加えることで、むしに関する知識があまりない女性保育者や園児でも簡単に使用できることを考慮して作成した。

トップページでは「なまえ」「いろ」「きせつ」「なかま」「おおきさ」「すみか」「しゃしん」の 7 つの検索方法を設けており、クリックするとそれぞれの検索ページに移ることができる。このデジタルむし図鑑では、保育者だけでなく、園児や近隣の小学校に通う児童の使用も想定し、使用したすべての漢字にふりがなをつけた。また、検索ページのつながりをより分かりやすくするため、それぞれのページのテーマカラー・キャラクターを決めた。例えば、「いろからさがす」ページではテーマカラーはオレンジで、同じキャラクターを使用している。そうすることで、視覚的に子どもたちにも判り易い様心掛けた。

検索ページとして、「いろからさがすページ」を示した。「いろからさがすページ」から探すページでは、見つけたむしの色の特徴から、調べることができる。色は、「あかいろ」「ちゃいろ」「あお・むらさき」「みどり」「オレンジ・きいろ」「くろ・はいいろ」「しろ・うすいいろ」の7色とした。色の認識に関しては、むしのどの色を主に認識するかが、人によって異なることを考慮して、例えば、黒地に青い模様のむしは「あお」「くろ」の両ページに掲載するようにし、様々な色の感じ方に対応できるようにしている。ここページでは、それぞれの色をクリックすると、各いろのページに移ることができる。例えば、色から探すページ上で、「オレンジ・きいろ」をクリックするとそのページにとぶことができる。先ほど述べたように、色の認識のしかたには人によって違いがあるので、全体的に「オレンジ・きいろ」でなくても、一部の模様が「オレンジ・きいろ」であるむしや、「オレンジ・きいろ」と認識する人がいるであろうと予測されるむしは、このページに掲載している。ここでは、むしの写真をクリックするとそれぞれのむしのページへ移ることができる。個々の虫のページでは、種名までの同定が可能であった 157 種について全て作成した。個々のむしのページへは各検索ページに掲載したむしの写真をクリックすることで移動できる。むしのページでは、「なまえ」、「いろ」、「きせつ」、「なかま」、「おおきさ」、「すみか」という基本的な情報から、そのむしに関する少し詳しい解説まで掲載している。

 本学理科教育講座生物学教室では、これまで大学キャンパス内に棲息する生物相に関する詳細な調査を実施し、調査結果を基に各種のデジタル図鑑(植物、菌類、昆虫・土壌生物、プランクトン)を作成してきた。これらの図鑑は、広く一般の活用を目的として HP 上で公開している(本学 HP トップページの「教材・図鑑」を参照, http://www.nara-edu.ac.jp/21_kyouzai_zukan.htm)。中でもプランクトンの図鑑(http://biol-zukan.nara-edu.ac.jp/Top.html)は、2009 年 6 月 1 日の「日本教育新聞」一面を飾ったが、掲載後のアクセスカウンターの設置により、わずか2年間で約10,000件のアクセスを記録している。図鑑に付随して設置されている掲示板(http://8811.teacup.com/maxinuhzukan/bbs)では、一般から寄せられる様々な質問に継続的な対応を行っており、掲示板による過去5年間の相談件数は 65 件程である。また、教育現場からの研究相談への対応も行っており、図鑑を通しての地域貢献の一例としては、多教育機関への材料提供や出前授業が挙げられる。これまでに、奈良女子大付属学校、若草中学、聖心学園中等教育学校、奈良女子大学等、神戸大学等に対するプランクトンの材料提供が、近隣の飛鳥小学校では昆虫に関する講義および材料提供が実施された。本研究により完成・公開される「奈良教育大学附属幼稚園デジタルむしずかん」は、これまでのデジタル図鑑と同様な運営・管理を計画している。したがって、本学付属幼稚園の園庭およびこどもの森と言った限られた場所に棲息する生物に関する図鑑であるものの、その利用価値は非常に高く、教育現場で出現する様々な生物相の解説の提供をはじめ、教育現場への教材の提供、地域の住民から生じる生物に対する疑問に対しての情報提供等、多岐にわたる活用が考えられる。

 教材としての検討:本研究では、園児たちが“むし”とよぶ生き物に焦点をあて、身の回りの生き物への興味の芽生えを手助けする教材づくりを目的としてきた。本研究で作成したデジタルむし図鑑は、実際に幼稚園での調査を行ったことにより、まさにその現場で観察される“むし”の図鑑を作成することができた事が大きな特徴である。保育者と園児が実際に、園庭やこどもの森に出て、むし採りや自然観察を行う際に、この教材を活用するためには、無線 LAN ルーターや iPad を併用したインターネット接続により、採集したその場でインターネット図鑑を使用できる環境が必要とされる。また、園児たちが、園庭やこどもの森での自然観察や遊びのなかで自らむしを探したり、見つけたむしを調べたりできるよう、園児向けの小冊子の作成を行い、奈良教育大学附属幼稚園に設置する必要がある。これらは、本学理数教育研究センターの支援のもとすでに設置を完了している。

 

【課題】

 今後の課題としては、“むし”の活動が活発になる春から夏を待って、実際に現場で使用することにより、その効果を評価する事が挙げられる。来年度には、本学附属幼稚園においてこの教材を利用した研究授業の実施が望まれる。本研究で作成したむし図鑑により、身の回りには様々な種類の生き物がおり、それぞれが大きく違っていたり、少し違っていたりすることを学び、園児たちに身の回りの生き物への興味を芽生えさせる手だてとなることを期待している。

 

【引用文献】

  1. 別役実(1981)虫づくし. 鳥書房, 東京.
  2. 平嶋義宏・森本桂(監)(2008)新訂原色昆虫大図鑑Ⅲ(トンボ目・カワラゲ目・バッタ目・カメムシ目・ハエ目・ハチ目 他).北隆館.
  3. 市川顕彦(2006)バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑.北海道大学出版社.
  4. 宮崎勝己(2008)節足動物における分類学の歴史.節足動物の多様性と系統.石川良輔(編),裳華房,東京,pp. 2-27
  5. 文部科学省(2008)幼稚園教育要領解説. フレーベル館, 東京.
  6. 森本桂(監)(2007)新訂原色昆虫大図鑑Ⅱ(甲虫篇).北隆館.
  7. 村井貴史・伊藤ふくお(2011)バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑.北海道大学出版会.
  8. 岡田要(2004a)新日本動物図鑑〔中〕.北隆館.
  9. 岡田要(2004b)新日本動物図鑑〔下〕.北隆館.
  10. 齋藤恒(2004)奈良教育大学キャンパスに生息する昆虫データベースの構築.奈良教育大学卒業論文. 
  11. 志村隆(編)(2005)日本産幼虫図鑑.学習研究社.
  12. 高見真依・齋藤恒・新井一平・石田正樹(2005)奈良教育大学キャンパスに生息する生物の図鑑(小学生を対象にしたインターネット図鑑作成).奈良教育大学附属自然環境教育センター紀要. 7, 57-68.
  13. 田仲義弘・鈴木信夫(1999)野外観察ハンドブック 校庭の昆虫.全国農村教育協会.
  14. 矢田脩(監)(2007)新訂原色昆虫大図鑑Ⅰ(蝶・蛾篇).北隆館.
  15. 八木沼健夫(1986)原色日本クモ類図鑑.保育者.
  16. 八巻孝夫(2002)小学館の図鑑 NEO 昆虫.小学館.
  17. 八巻孝夫(2005)小学館の図鑑 NEO水の生物.小学館
  18. 山下久美・首藤敏元(2004)幼児への動物教材(ムシ類)の提供についての研究,埼玉大学教育学部教育実践総合センター紀要. 3, 149-157.
  19. 養老孟司(監)(2011)講談社の動く図鑑move昆虫.講談社.